専門知、特に科学をインタープリターするのに長く、科学雑誌が大きな役割を果たしてきた。成果を取り上げられることはもちろん、雑誌の創刊を支えた本学関係者も多い。子供たちに科学を伝え続けてきた誠文堂新光社『子供の科学』(通称KoKa)が2024年で100周年を迎える。小学校高学年から中学生を対象にした科学雑誌で、小柴昌俊先生をはじめ歴代のノーベル賞受賞者も愛読してきたと聞く。子供に読めるように漢字にはルビがふってあり、親しみやすいカラフルなゆるふわキャラや漫画が掲載されているが、本格的に取材された記事の中身は濃い。初代編集長は原田三夫氏。本学理学部を卒業後に教員を経て、科学ジャーナリストとなり多くの科学雑誌を創刊した。2月号では悲しいお知らせがあった。紙飛行機の付録連載を49年間、続けた二宮康明氏が亡くなった。冊子の最後にいつも紙飛行機の厚紙が入っていて、それを楽しみにしていた読者も多かったであろう。
子供向け科学雑誌として多くの人に親しまれたのが、学研から出ていた科学(『〇年の科学』シリーズ)、である。一度は休刊し、その間に科学の読者だった大人をターゲットにした付録ボックスとセットの『大人の科学』が人気を得た。シルク印刷キットやテルミンmini、卓上ロボット掃除機など、なつかしくも楽しいキットが満載でたびたび話題になった。2022年には「世界とつながるほんもの体験キット」という言葉を掲げ、『学研の科学』として再スタートしている。「水素エネルギーロケット」や「ときめく実験鉱物と岩石標本」などワクワクする内容だ。
両者の共通点は、雑誌という紙媒体のメディアでありながら、科学の楽しみに欠かせない手を動かす楽しさを伝えていることだと思う。『学研の科学』はキットをメインに、KoKaは紙面で工作やプログラミングの方法を伝えることで、それを促している。ネットとの連動や、女性が以前よりも多く登場するなど時代に合わせて変化をしている。
科学雑誌では他にも『ニュートン』が有名である。初代の編集長は理学部を退官した竹内均氏。私が学生時代であったときには、中国、韓国版も出ており、共同研究をしている韓国の学生から日本の雑誌だとなかなか信じてもらえなかった。洗練されたスタイルから、ナショナルジオグラフィックのように欧米の雑誌だと思っていたようだ。大人向けとしては『日経サイエンス』や岩波の『科学』がある。日本の科学雑誌は90年代に廃刊が続き、現状も寂しい状況が続いている。科学を楽しむ心をはぐくむメディアの今後に期待したい。