インタープリター養成の取り組みは、国内ではここ数年で本格化したもので、その教育内容については、いまだ標準力リキュラムなどがあるわけではない。こうした状況のなか、本プログラムでは、プログラム開始の平成17年度から、日々の授業とは別に、科学コミュニケーションの教科書作成作業を進めてきた。教科書作成にあたっては、単に科学の面白さを伝えるためのハウツーものではなく、関連する諸学問領域の知見も 生かして、科学と社会の間で何を伝えていくべきか、わかりやすく見取り図を描くことを目指してきた。筆者は、藤垣 裕子 准教授・廣野 喜幸 准教授のもとで、当初から、教科書作成プロジェクトに携わってきたので、これまでの活動について簡単に報告したい。
教科書作成プロジェクトでは、まず、教科書作成の準備段階として、科学コミュニケーションに関わる文献調査をおこない、基本文献資料集を編集した。編集作業の中心を担ったのは、特任研究員(ポスドク)と技術補佐員(本学博士課程在学中の大学院生)で、その専門分野は、分子生物学・科学技術社会論・地理学・農業社会学・歴史学・社会学・医療人類学・科学人類学・教育学・科学技術史と多岐に渡っていた。各々が、自分の専門分野に近いところから、科学コミュニケーションに関連する文献を持ち寄ってみると、一見、「こんな文献が科学コミュニケーションに関係 あるの?」と驚くような文献が多数集まった。集まった文献は、皆で精査し、分野ごとの偏りをなくすなど厳選したが、それでも出来上がった冊子は、電話帳ほどのボリュームとなった。資料集づくりに続いて、科学コミュニケーションに関する海外のジャーナルを、創刊号から輪読した。
こうした下準備を経て、現在、教科書作成作業を本格的に進めており、近く各章の具体的な節立てもぼぽ決まることになっている。今年10月に本プログラムの第三期生を迎える時までには、簡易製本した「教科書」が準備できているはずである。この簡易版の教科書を、実際にプログラムの授業で用いながら、学生の意見や反応をもとに、さらに中身を充実させ出版する予定である。
2007年6月27日号