連載エッセイVol.62「1500キロカロリー」 真船 文隆

2012-10-03

ダイエットとリバウンドを繰り返し、そろそろ何度目かのダイエットの季節が始まろうとしている。リバウンドしているので全く説得力はないが、ダイエットをするためには、食べ物の熱量(カロリー)を頭に入れておくのがよいと思う。大学生協食堂では、メニューにカロリーも表示してあるのでわかりやすい。一番低カロリーな主食はおそらくうどんで220 kcal (キロカロリー)、逆にかなり高カロリーなのはカレーライスで800 kcalである。成人男性の基礎代謝に必要なエネルギーが1日あたり1500 kcalなので、うまくバランスを考える必要がある。食べ過ぎたとしたら、運動なら2時間のマラソンで20キロから25キロ走ると、1500 kcal分のエネルギーが消費されるようだ。

この夏、大学では節電が大きな課題であった。ピーク時電力を前年度比20%減、使用電力量を15%減という数値目標を掲げており、原稿を書いている8月下旬の段階でも、かなりの達成度のようである。電力量に関して言えば、10畳の部屋の一般的な明るさの照明(120 Wとする)を15時間使用する際に消費する電力量は1800 Wh(ワット時)で、1 Whは0.86 kcalであるので、成人男性の基礎代謝とほぼ同じ1500 kcal程度の値になる。一方、1500 kcalつながりで言えば、エタノール 5 mol(約0.3リットル)が完全燃焼する際に発生する熱量は6834 kJ(キロジュール)である。1 kJは約0.24 kcalなので、熱量は1640 kcalとなる。このエネルギーは一般家庭のお風呂であれば、水の温度を6度くらい上昇させる熱量に相当する。また、力士(175 kgとする)ひとりを駿河湾の海面から富士山頂に持ち上げて得られるポテンシャルエネルギーは6.6×105 kgf・m(重量キログラムメートル)であり、1 kgf・mは2.3×10-3 kcalであることを用いると、このエネルギーも約1500 kcalとなる。

ポイントは、生命現象であれ、物理現象であれ、エネルギーという共通の数値で議論することができるということである。ただし、ワット時やジュールやカロリーなど、いくつもの単位が存在するということからも分かるように、対象とする事象によって用いられる単位は異なる。単位が異なると、全く別もののように思えるが、同じエネルギーであり、それぞれの数値は比べることができる。上記の例を感覚でなく、数値で比べて、意外に思うこと、あるいは何か新たに見えてくるものはあるだろうか?

さて節電対策として、昼間は大学の部屋の照明を消してみた。0.12 kWの節電である。一方、「東京大学の電力使用状況」サイトによると、駒場キャンパス全体での現在の電力は2850 kWである。0.004%のささやかな電力削減に関しては、数値で議論せずに自己満足に浸っているのがよかったのかもしれない。

2012年9月24日号