科学コミュニケーション研究の王道のひとつに、科学あるいは科学者の信頼研究がある。特に気候変動やCOVID-19の研究を通じて、科学を囲む政治性が不信を呼ぶことが論じられてきた。そしてアメリカにおいて第2次トランプ政権が生まれたいま、デジタルメディアにおけるファクトチェック機能が薄れ、科学においてもフェイクニュースや陰謀論の影響は拡大する可能性が懸念される。
最近、筆者はドイツの研究者たちとJournal of Science Communicationでデジタルメディアの信頼と不信に関する特集を組んだ。13本の論文を通じてわかったことは、使用メディアの選択によって科学の信頼は大きく変わるという現状である。SNSばかりを使う人の科学信頼は高くはなく、オールドメディアを使う人は信頼が高いという結果だ。
研究者の信頼を保とうとすれば、なるべく安定した信頼されるオールドメディアに露出するのが戦略として望ましいかもしれない。一方で、まさにフェイクニュースに流されていく人々をなんとか科学に振り向かせるため、SNSに発信するということも必要であろう。多くの研究で指摘されるのは、論争的分野の科学者の信頼が疑われる傾向だ。もちろん、誠実な研究とコミュニケーションをしている研究者がほとんどであるが、科学と政治性の切り分けを意識することが信頼を守ることになる。
特集号で興味深かったのが、気候変動で後ろ向きと評されたブラジルのボルソナーロ政権時(2019年~2022年)に、SNSで気候変動に関する投稿が5倍になっても、否認等の投稿は増えなかったという研究結果だ。ブラジルでもオールドメディアの報道がしっかりと堅持されたようだ。こうした古くからのメディアも積極的にSNSにニュースを流す時代であり、クロスメディアの信頼が重要である。
それでは第1次トランプ政権時(2017年~2021年)ではどうだったかと興味を持ち、イエール大の2009年から続く気候変動科学に対する信頼調査を確認した。意外にも、ここでも人為的影響を信じない人々は3割ほどで安定しており、第1次トランプ政権の前後でもあまり変化はなかったようだ。
しかしSNSの環境は悪化している。そして、ワクチン接種などの行動は、科学信頼、科学者信頼と同時に政府への信頼が強く影響していることがわかっている。パリ協定と同時にWHOを離脱したアメリカと、世界の科学の信頼に引き続き注目したい。