連載エッセイVol.66 「『合コン型』サイエンスカフェ」 長谷川 寿一

2013-02-08

7、8年前にはほとんど馴染みのなかったサイエンスカフェであるが、昨今では認知度も高まり、JSTのSciencePotalサイトでは、各地のサイエンスカフェ情報が刻々と更新されている。個人的には日本学術会議の科学力増進分科会委員として、その導入と促進に関わってきたこともあり、喜ばしい限りである。

自分自身も年に何度かサイエンスカフェで話題提供あるいはファシリテータを務め、運営のコツも少しは分かってきたように思う。カフェに関わった当初から、参加者との双方向コミュニケーションを促すには、話題提供者が一方的に独りよがりでしゃべってはいけない、できればPowerPointの利用も最小限、ファシリテータの役割が大切、などと説いてきた。が、結局のところ、参加者の満足度は、参加者がどれほど主体的に関われるか、会場の一体感を共有できるかにかかっているように思う。

ここ数年、私が企画するカフェでは、話題提供者の数を増やし(4〜8名、平均6名程度)、話題提供の時間は短く(10分以内)、質疑応答セッションは話題提供者が参加者の中に入り込む、あるいは話題提供者が相互にファシリテータ役を演じるという形で進めている。命名が適切かどうか自信がないが、合コン型カフェと呼ぶことにしよう。典型的には、自己紹介を兼ねて話題提供者が研究紹介をした後、研究者が参加者の中に散らばって意見交換、そして最後に会場全体でまとめの議論というスタイルである。

研究者は、所詮役者でも芸人でもないので、一人で座を持たせるの難しいが、仲間と共に一座形式であれば、参加者との掛け合いもごく自然に進む。バンドのノリである。動物行動学会主催で行った「動物行動いろいろ、研究者いろいろ」と題するカフェでは、動物行動の多様性とともに、研究スタイル、研究者生活の違い、と同時に通底する共通点、が浮き彫りになった。

参加者の側からすれば、いろいろな話が聞けて研究分野の広がりがわかり、研究者との距離感が近いので発言もしやすいという利点がある。話題提供する研究者同士でも絆が深まり、打ち上げのビールも美味しい。どうぞ一度、試してみてください。

2013年1月25日号