連載エッセイVol.65 「キャリア教育は東京大学に必要か」 石浦 章一

2013-01-09

平成24年の小中学校全国学力・学習状況調査の結果、小学生において、理科の勉強は好きで(約82%)よく分かる(約86%)という結果は、算数や国語に比べて高い。しかしながら、理科を大切と思っている児童は少なく、将来役に立つものでもないと考えていて、その結果、科学技術職に就きたくない、と答えている児童が多いのである。教科書でもっとキャリア教育についての中身を充実させて、科学知識がどのように応用されているのかを教えないといけないのかもしれない。その意味で、東大教養学部の学生くらいになると、さすがにそのようなことはないだろうと思ったが、1年生の必修授業でアンケートを取ったところ、何と8割近くの学生が「1年の時からキャリア教育の授業をしてほしい」という要望を出してきたのである。

そこで、このようなことを解決するには私たちの部門の出番だということで、定松淳・特任講師と相談し、冬学期から早速、主に、科学技術インタープリター養成プログラムを修了した若手を招いて、「進路を選ぶ10の方法」と題した全学自由ゼミを開講した。東大生が、進学振分け、後期学部進学、大学院入学を機に、何を考えて進路を選んだか、なぜ転職したのか、などを率直に話してもらおう、というのが趣旨である。同時に、本郷のキャリアサポート室の応援を仰ぐことになった。ここでは、自分自身のキャリアに対する考え方を振り返ってもらうため、ワークシートに記入したり、グループ・ディスカッションを取り入れたりすることで、自分の力を引き出すということを目標にしている。その結果、150人超の出席者がひしめく大人気講義になってしまった。ファシリテーターの定松講師の調整により、文理が混在している参加者にも十分理解できる講義になっている。また、登壇する講師の方のキャリアも文理いろいろで、話が多岐にわたり、各講師の意欲と熱気が十分に学生に伝わっているのではないかと思う。

何を今さら東大が、という感想をお持ちの方も多いだろう。しかし、我が子よりも年下となった学生を見ていると、小学生がそのまま大学生になったような気がして、手を差し伸べたくなる。これも年とった証拠として、同僚の皆さんにも許していただくことにしよう。

2012年12月17日号