内閣府は2017年11月27日に「科学技術と社会に関する世論調査」の結果を公表した。この調査は総理府時代の1976年以来10回を数え(今回は7年ぶり)、国民の科学技術に関する意識の動向を知る上で重要なものである。昨年のこのコーナーでも書いたが、2005年に本インタープリター養成プログラムが設立された背景には、当時、上記調査をはじめ国民の科学離れを示すデータが数多く挙がり、それを防ぐことが本プログラムのミッションであった。では、近年の国民の科学技術に対する意識はどう変わったのだろう。
最も基本的な調査項目の一つは、科学技術に関する情報に対する関心度である。1976年の調査では関心があるという回答率がほぼ60%であったが、その後40年間は50%台半ばを上下し、本プログラム設立直前の2004年は53%とたしかに相対的に低い水準であった。しかしその後、2010年の調査では、過去50年間で最高の63%まで上昇し、今回も61%と高水準を維持している。この間、ノーベル賞の受賞が相次ぎ、はやぶさの帰還等科学ニュースが話題に上ることが多かったことが背景にあるのだろう。
ただし科学情報に対する関心度で注意したいのは、顕著な世代差があることである。1976年の調査で関心度が一番高かったのは20代だったのだが、1990年代以降のすべての調査で30歳未満の若者の関心度が最低だった。今回の調査で関心度が最も高かったのは60代(1976年当時の20代、筆者ら鉄腕アトム世代)、次いで50代であり、老高若低傾向が顕著である。国立教育政策研究所による調査では、小学生の「理科が好き」という回答率は他教科よりも高いものの、中学生になると急減し、「理科の勉強は役に立つ」という回答率は、小中を通じて非常に低い。14歳を対象としたTIMMSと呼ばれる算数・数学および理科の教育に関する国際調査でも、日本の中学生の理科好きは最低水準である。
まとめると、国民全体としては、近年、科学に対する関心度は高まっているが、若者の科学離れは依然として続いているように思われる。詳しく述べる余裕はないが、男女間にも関心度に顕著な差が見られる。今回の調査でも、科学技術情報への関心度が男性では70%なのに対して、女性では52%に過ぎず、20代女性に限ると40%まで落ち込む。子どもや若者、女性に対して科学の魅力をどう伝えるかが大きな課題である。手前みそで恐縮だが、人間科学や心理科学などソフトなサイエンスはもっとアピールするべき分野だろう。
2018年1月25日号