連載エッセイVol.204 「やはり国際学会は現実空間で」 大島まり

2024-08-26

先日、私が主として研究活動している計算力学(Computational Mechanics)の国際学会がバンクーバーで開催された。2年ごとに開催される参加者が2000人から3000人の大規模な国際会議である。新型コロナ感染症により、前の2回はオンラインでの開催となったため、6年ぶりの対面開催となった。特に前回の2022年では、開催国である日本の大会組織委員の一人として準備に携わっていて、最後の最後まで対面開催を検討したが、当時の状況からオンラインにせざるを得なかった。それだけに、6年ぶりに研究仲間にリアルで会うことができて、純粋に嬉しかった。オンラインではなかなか難しい詳細なデイスカッションや情報交換ができ、また、新しい出会いもあった。そして、なによりも一緒に食事ができたこと!

このたびの国際学会を通して、6年前からの大きな進歩を実感した。一番ホットな研究トピックスは、仮想(サイバー)空間上に現実(フィジカル)空間と同じ状態・状況の再現を試みるデジタルツインに関連した研究である。デジタルツインの実現や社会実装のためには、現実空間における、例えば製品やそれらに関わる様々な情報を収集し、モデル化してコンピュータ上に再現する必要がある。そのため、機械学習や深層学習などのAIが欠かせない。私自身も専門である血流の数値解析(Computational Hemodynamics)に機械学習を取入れて、医用画像×血流シミュレーション×AIにより、臨床応用を目指している。同じ方向性を目指している研究者たちとも出会えて、今後の面白い研究の展開を感じた。

また、学会で実感したもう一つのことは、参加者のプレゼンの質が向上したこと。ビジュアルがわかりやすく、動画なども駆使してとてもかっこいいプレゼンが見られた。自分のプレゼン資料は、そこはかとなく昭和(!?)を感じてしまう。

素晴らしい発表をしている人がいたので、プレゼンで使っているイラストなどはどうやって作っているのかを聞いてみた。答えは、生成AI。自分の考えているイメージを表すキーワードをいれたら書いてくれたとのこと。なるほど。。。

2年後は、ミュンヘン。そのときの研究動向はどうなっているのだろう。研究、がんばろう。

会場は、海が美しいバンクーバー冬季オリンピックの跡地。

『学内広報』no.1585(2024年8月26日号)より転載