連載エッセイVol.196 「宇宙と地球と社会と私」 川越至桜

2023-12-21

冬本番、日の入りが早くなり、帰宅する時間帯でも星がキラキラと綺麗に見える季節になった。最近は、研究室を出る頃に土星が真正面(西の空)に見えているが、月が北寄りの方角や空高くに見えたり、オリオン座や冬のダイヤモンドといった星の並びを見つけたりすると、冬だなあと実感する。

空を見るときは、自分の足元(の安全)を確認するようにしているが、私たちの足元の地球は、自転をしながら太陽の周りを回っていて、太陽も天の川銀河(銀河系)の中を動いていて、その天の川銀河も、広大な宇宙の中を動いている。宇宙規模で考えた時、自分はどちらの方向に動いているのだろうか。そう考えると、平衡感覚を失ってクラクラするような感覚が生まれる。一方で、広い宇宙の中に地球があり、そこに自分が存在しているということを認識し、広い意味での自分の立ち位置がわかってくる様な気もする。

全体を広く捉えるという視点(神様視点とも言えるのだろうか?)と、自分という視点を行き来することは、実はとても難しいことなのではないだろうか。例えば、地球環境が変化していることは理解できても、それを自分事として捉えられているのか?と言い換えると、少なくとも私自身は難しいなと感じている。

複雑かつ予測困難な時代において、私たちは様々な社会課題や地球規模の課題に直面している。その課題には唯一解はなく、最適解を探し出すことが必要であり、多様な状況において、多様な立場の人たち同士で合意形成していくことが求められている。その際、自分事としての視点、多様な人々の視点、社会全体として広く捉える視点を往還することが重要になると考えられる。複雑な社会の中、たまには自然の中に身を置き、宇宙の中の自分を見つめ、自分の足元と位置付けをゆっくり考える時間を持ちたいと思う今日この頃である。

空に月と木星が見えており、道路が街灯で照らされている様子
今年2月駒場IIリサーチキャンパス西門からの空。このときは月と木星が見えている

『学内広報』no.1577(2023年12月21日号)より転載