連載エッセイVol.31 「研究をわかりやすく伝えるには」 大島 まり

2010-02-19

最近、研究者が中学校や高校に出向いて行う出前授業や、一般の方々を対象にしたサイエンス・カフェが盛んに行われるようになってきた。このように科学技術の発展に第一線で携わっている研究者が、非専門家である一般の人々に自分の研究をわかりやすく伝えようとするアウトリーチ活動はさまざまな形で試みられている。一般に、科学技術におけるアウトリーチ活動とは、分かりやすく親しみやすい形で人々に科学技術を伝え、対話を通して人々の要望や不安をくみ取り、また自らの科学技術研究活動に反映させていくことをいう。

アウトリーチ活動の場合には、伝える相手が学会のように興味・関心のベクトルが同じ方向に向き、また持っている知識も似たような集団ではない。私自身、1997年頃から中学・高校に出向いて出前授業を行っているが、最初はその距離感がなかなかつかめず、随分戸惑ったものである。経験だけは長いが、正直言って、いまだにつかみ切れていないことが多い。わかったことは、コミュニケーションの基礎なのだろうが、相手を知ることである。相手がどのようなバックグラウンドであり、どのようなことに興味を持ち、どのようなことを考えているのか、少しでも知ることができれば、第一歩なのである。そして、相手と自分との接点を見出し、共有できる場を見つける、いわば、合コンのようなものである。

個人的には悲しいかな、理系女子の悲しいサガで、あまり合コンに呼ばれたことがないが、なぜか合コンを頼まれて設定することが多かった。そのなかで、やはり盛り上がる合コンは、お互いの会話が盛り上がった時である。相手の関心を釘づけできるほど話術が巧みであれば話は別だが、そのような人は稀である。特に理系の人は、あくまでも一般論であるが、コミュニケーションの苦手な人が多い。だから、共通の興味や話題を見出すことが大事で、それを見つけることができれば、会話が発展して盛り上り、楽しくなる。一方、それがないと会話もとぎれがちで、シーンと、さびしい状態になってしまう。科学技術コミュニケーションを合コンに例え、少し横道にそれた感があるが(そもそも例えていいかという話もあるが)、ここで言いたいことは「共有できる場」を見つけることである。そして、その共有の場でお互いに共有できることに取り組むことだと思う。私たちがよく実験や実習を取り入れるのは、言葉で説明するよりも実際に取り組んでみた方が効果的だからである。実験することにより、共有できるゴールが見え、連帯感も生まれるし、成功したときの達成感も共有できる。

アウトリーチ活動は、研究者に求められている研究や教育とは異なり、残念ながら重要性は低い。しかし、国民の見地からは、研究の意義や成果の社会還元などが理解できるような説明責任、いわゆる研究のAccountabilityが求められるようになってきている。特に、昨年行われた事業仕分けを見ていると、その傾向は今後、ますます強くなるであろう。共有する場から探らないといけない人々を相手にするのは億劫かもしれないが、コツを知れば、思ったよりコミュニケーションできるものなのかも知れない。研究をわかりやすく伝えることに、若い研究者も含めて多くの研究者に是非チャレンジしてもらいたい。

2010年2月19日号