連載エッセイVol.221「科学を美しい空間で」 青野 由利

2026-01-26

昨秋、「なんちゃってワーケーション」を決行した。場所は、わけあってフランスのパリ。招聘されたわけでもなんでもないので、渡航費も滞在費もすべて自費。でも、「バケーション」ではないので、自分なりのテーマを二つ設定した。

一つは「博物館における情報とメディア」だった。なぜなら、東大の科学技術コミュニケーション部門とは別に、某私立大学の非常勤講師として「博物館情報・メディア論」を担当しているからだ。

これを題材にパリ滞在中、博物館や科学館に通った(ちなみに、盗難で話題をよんだルーブル美術館には足を踏み入れていません)。

系統立てて訪問したわけではないので、「感想」程度にとどまるが、感じたことが二つある。

一つ目は、歴史的建造物やアートと科学との融合が随所にみられることだ。

たとえば、パリ3区にある工芸技術博物館(Musee des Arts et Metiers)。技術史をたどることのできる興味深い場所だが、もとはと言えば中世の教会らしい。美しい礼拝堂には物理学者レオン・フーコーが1851年にパリのパンテオンで公開実験した「フーコーの振り子」の実物のおもりや、振り子実験が展示されている。

そのパンテオンも巨大なドームを持つ歴史的建造物で、今も高い天井からレプリカの金色のおもりが吊り下げられ、当時の実験を再現し続けている。

16世紀以来の歴史を秘めたパリ市庁舎では、企画展「パリからベレンへ 地球規模の気候変動対策の10年」が開かれていた。庁舎の外壁には巨大な現代アート作品が掲げられ、環境問題への強いメッセージを伝えていた。

いずれも、単に科学や技術を展示しているだけではなく、その空間が美しく、歴史も感じられる点が、ちょっとうらやましい。

二つ目は、「子ども」を意識した展示が目立ったことだ。

工芸技術館でも、パリ市庁舎の企画展でも、人類学博物館でも、子ども向けのパンフレットが用意され、展示のそこここに子ども向けの解説やゲームなどを通じて学べる工夫がされていた。実際、子ども連れの訪問者も多くみかけた。

もうひとつ気になったのは、日本では国立科学博物館をはじめ、多くの博物館の窮状がニュースになっているが、フランスではどうなのか、という点だ。今回は調べる余裕がなく、次回のテーマとしたいが、それにしても円が安すぎる! これでは「次回」がいつになるか、まるでおぼつかない。

『学内広報』no.1602(2026年1月26日号)より転載