連載エッセイVol.220「「反ワクチン」ではない検証は可能か」 定松 淳

2025-12-19

「科学と社会の架け橋」となれる人材を育成するというミッションでスタートした科学技術インタープリター養成プログラムも今年で21期生を迎えた。その1期生に、理学系研究科生物科学専攻で理学博士号を取得した後、映像制作会社のテレビマンユニオンに就職した修了生がいる。その1期生、大西隼さんが企画・監督・ナレーション・プロデューサーを務める映画『ヒポクラテスの盲点』が、この10月に公開された。

日本政府の新型コロナワクチン接種政策の妥当性を問おうとする意欲作で、その主旨はいわゆる「反ワクチン」ではなく、あれだけ大規模に展開された政策を「きちんと検証しませんか」ということであると思う。この映画が取り上げているテーマを私なりにまとめると3つ、①コロナワクチン接種後に多くの重篤な副反応が発生しているけれども、被害者救済制度でもあまり救済されず、社会的な関心も低調であるということ、②その背景でもあるが、2021年以降日本社会においてワクチン接種を推奨するキャンペーンが政府によって展開され、マスコミによっても後押しされていたこと、③その背後で、mRNAワクチンの問題点が把握されていたはずなのに、政策に反映されず、国民規模での接種が継続されてきたこと、である。

映画の中心は、2023年9月に発足した一般社団法人「ワクチン問題研究会」、特にその代表である福島雅典氏の活動についてのドキュメンタリーである(福島氏は京都大学名誉教授で再生医療研究の権威でもある)。同時に、コロナワクチン接種政策に関与してきた長崎大学の森内浩幸氏もインタビューに応じている。森内氏も認めているコロナワクチンのネガティブな影響として、若年男性における心筋炎・心膜炎の有意な増加があり、それは日本の3回目ブースター接種の前には判明していたという(JAMA誌 326(14): p.1396)。

当時を振り返ると、オミクロン株の拡大が始まり、菅内閣と比して岸田内閣のワクチン政策はもたもたしていると批判されていた時期である。現実にはブレーキをかけるのが難しい状況であったことは理解できる。だからといって事後的な検証を排除していいということにはならないだろう。一方で政府や製薬会社が、訴訟→賠償という展開を恐れていることは十分に想像できる。「真実和解委員会」のような枠組みが必要なのかもしれない。

『学内広報』no.1601(2025年12月19日号)より転載