Re:Logergist(2021) エッセイ「What is “パラパラ” ?」

2023-09-27

「Re:Logergist」とは

グループでの討論を経て科学(学術)エッセイを書く企画です。日常を描写する科学エッセイを書き続けた物理学者の集団、「ロゲルギスト」の再現・再解釈を目指します。

科学(学術)エッセイ執筆を学ぶ授業として、Sセメスター『科学技術表現論Ⅱ』(担当教員:内田麻理香 特任准教授)を開講しています。

Re:Logergist(2021) エッセイ「What is “パラパラ” ?」

放談「チャーハンについて」を踏まえて、HYDさんがエッセイを執筆しました。

執筆者:HYD(総合文化研究科 広域科学専攻 修士2年)

今回の「チャーハン放談」を通して、私が得た新たな気付きは「チャーハンの“パラパラ”は、水分量ではなくてお米同士が離れているか否かで決まる」ということだ。自分自身「ご飯はご飯のままで食べたい」という考えの人間なので、チャーハンを作った経験は数える程しかないのだが、パラパラする=べちゃっとしていない=水分が少ないと単純にイメージしていた。しかし、「どんな状態を指して“パラパラ”というのか?」という点についてきちんと考えたことが無かったことに気付かされた。

皆さんの“パラパラ”談義を聴く中で、“パラパラ”とは「お米同士の離れ具合」であるという見解に深く納得した。勿論水分量も重要なファクターのひとつではあると思うが、水分量の少ないことが“パラパラ”の定義ではないという認識を得たことは(これまであまり考えてこなかったとはいえ)興味深く新鮮な気付きとなった。

したがって、油の重要性が高く、卵も米同士をくっつかせないための材料であると合点した。そう考えると、美味しいチャーハンを作るポイントとして、卵+油+酢を原材料とするマヨネーズがしばしば話題にのぼるのはひどく理にかなっている。また、私はこれまで、ゆで卵作りに数多く失敗したり、お菓子作りに卵をケチると全然膨らまなかったりした経験から、卵の状態変化は非常に奥深いと実感してきた。そのため、卵をどんな状態(混ぜ具合、タイミング、加熱具合など)で投入するべきかについても「米同士をくっつけない」という目的が明確になれば論理的に考えられると思った。

そして、“パラパラ”に関しては個人的にもう1つ面白い論点があった。「チャーハンは“パラパラ”な方が美味しいのか?」という点である。こちらは以前もふと考えたことのあるテーマで、母に「チャーハン、パラパラに作れんかったわ」と失敗した料理のように言われる度に「美味しく食べられるなら全く問題ないのに、こだわる必要があるのか?」と思っていた。まさに今回の放談では、「パラパラを追求」するというのは「宗教にとりつかれる」ようなものであり、美味しさの追求とは別物であるという話題が登場した。確かに一料理好きとしては、「“パラパラ”のチャーハンを作りたい」という思いは、「映える料理を作りたい」という思いのようなもので、必ずしも美味しいという感覚と比例するものではないと考えると納得がいった。そして、程度の差はあれ“パラパラ”の追求にとりつかれる人が多いことを踏まえると、それだけ魅力的な研究対象であるといえるだろう。料理好きではあるが、それ以上に面倒くさがり屋・ズボラな自分からすると、味に関わらなくとも形にこだわる人々には深い尊敬の念を捧げたい。