連載エッセイVol.1 「タミフルにおもう」 黒田 玲子

2007-04-11

鳥インフルエンザの流行に備えて世界中で備蓄を進めているタミフルが最近大きな話題になっている。日本はタミフルの消費大国で、2005年にはインフルエンザ治療薬としての処方が900万件もあったという。しかし、最近、10代の子供が、服用後に異常行動を起こし転落死するという痛ましい事件が報道された。厚生労働省は緊急に10代へのタミフル処方を原則禁止としたが、マスコミや一般市民の反応には賛否両論ある。10歳の誕生日直前は良いのに直後はだめなのは理解できないなどという親の意見も、ある意味ではうなずける。しかし、このように、連続した事象、グレーゾーンに無理やり線を引かざるを得ない事柄は世の中にたくさんある。また、すべての事柄にリスクとベネフィットが存在するように、すべての薬には多かれ少なかれ副作用がある。製薬会社はできるだけ副作用を減らし、薬効を高める努力をしているが、どうしても存在するリスクと、われわれは賢くつきあわなければならない。

それに、世間ではあまり議論されていないようだが、なぜ大人と同じカプセルを子供に与えるのか、ひそかに疑問に思っている。年齢に応じて量を減らした子供用の薬を投薬すれば、治療効果はあるが副作用が減るということばないだろうか?つまり、投薬するかしないかではなく、どのくらいという定量的な把握も必要でぱないだろうか?

ここではタミフルを例に挙げたが、発電・組換作物・脳死問題など多くの事柄で重要なグレーゾーン、リスクとベネフィットの理解、定量的把握などを扱っているのが、「科学技術インタープリター養成コース」である。本学の全大学院生を対象としたこのコースは、科学技術と社会の双方向性の架げ橋の役割を果たすインタープリターの養成を目指している。科学の理解増進活動というと、子供たちにいかに科学の面白さを伝えるかということに重点が置かれがちだが、本学のコースは、どう伝えるかだけではなく、何を伝えるかという視点も大切にする。正しく伝えるとはどういうことか、科学的ものの考え方とはなにか、最先端の科学の現場はどうなっているかなども扱う。10月開講の副専攻であり、文系、理系の大学院生を歓迎している。興味・関心のあるかたは、ぜひ挑戦していただきたい。

2007年4月11日号