タイトルは,筆者が今学期新たに開講したゼミの名称である。近年,国内外で教養教育改革について熱心な議論が行われている。私自身,中央教育審議会や日本学術会議,本学の関連資料などから多くを学んできた。また,近年の教育の別の世界的潮流として,Educator-centeredからLearner-centeredへと重心が移ったことも挙げられよう。医療の世界がPatient-centeredへ向かったのと同様に,そもそも大切なのは何か,ということが問い直されて得られた帰結である。そうしたなか,教育者が教養について考えを深めることは変わらず大事である一方,次の時代の担い手である学生が自ら考え,その議論を充実させていくことは,これまであまり取り組まれてこなかったからこそ,有意義なのではと感じたのである。ちなみに筆者は,リベラルアーツのキャンパスで学生時代を過ごし,最初に教育・研究職のご縁をいただいたのが,この駒場の地であったため,リベラルアーツに育ててもらったという思いが強い。
授業はアクティブ・ラーニングの手法で,アウトプットをアナログ,デジタル,エッセイの三種で表現するようにデザインした。前身の科学コミュニケーションゼミと同様に,百数十名の多くの希望者が興味を示してくれた。選抜を通過した受講生は,国際化,大学とは何か,科学者の責任など様々な要素に触れつつ,早速斬新なアイディアを見せてくれている。大学での豊かな学びの動機づけとなる初年次教育として,また,文I・II・III,理I・II・IIIの全科類からの参加に恵まれたため,次世代型の異分野融合教育としての意義も持つように意識している。
科学コミュニケーションも含め,こうした本学での教育活動を国際会議等で継続的に紹介している。アジア,アメリカ,ヨーロッパ,その他様々な地域の方々から好意的な反応をいただくことが多い。今も国際教育の世界大会でアルゼンチンに滞在しており,本日締め切りの受講生のエッセイが続々と地球の裏側へ届きつつある。これらはインタープリタープログラム修了生で出版社に勤務する仲間の力を借りて,電子書籍の形態にまとめ,ゼミ生で共有する予定である。
こうしたささやかな試みが種をまく役割を果たし,学生の皆さんの豊かな将来がそれを芽吹かせてくれて,やがて国内・国際社会に有意義な貢献ができればと願い,ブエノスアイレスの朝を過ごしている。
2013年7月25日号