今年も駒場リサーチキャンパス公開が、5月30・31日に開催された。両日ともに、あいにくの雨と風。しかも寒かった。例年にない悪天候にもかかわらず、来場者数は例年と変わらず、盛況であった。特に、事前登録いただいた中学生、高校生や学校の先生の当日ドタキャンはほぼなく、2000名を超える参加であった。
おそらく東京大学の施設を中高生に公開しようとした最初の試みは、生産技術研究所(生研)が六本木にあり、私が助手を務めていた1990年後半ではないだろうか。生研は第一木曜・金曜に一般公開として研究者や大学生を対象に行っていた。ほぼ全研究室が展示し、研究室総出で説明していた。研究を広く知っていただくともに、共同研究などのきっかけにもなっていた。
一方、六本木の近くには多くの中学校や高校があったので、若い人にも研究を知ってもらう良い機会になるのでは、と思った。当時の所長だった鈴木基之先生に相談し、許可を得ることができた。Scientists for the Next Generation(SNG)というボランティア組織を立ち上げ、職員や学生の協力を得ながら、1997年に「中高生のための生研公開」を初めて行った。近郊の中高生約80名が参加し、中高生向けの見学コースを周ってくれた。WEBのない時代だったので、参加のお願いに学校訪問し、ポスターやちらしを郵便で送った。女子校に説明のために電話したところ、あやしいと思われたのか、電話をたたき切られたことがあった。
それから生研は駒場に移転し、ボランティア組織だったSNGは次世代育成オフィスとして組織化された。駒場リサーチキャンパス公開として先端研との共催での金曜・土曜の開催となった。遠方からもさらに多くの中高生が訪れるようになったが、新たなチャレンジも生じた。例えば、学校は団体で参加し、一般来場者よりも滞在時間が長いため、中高生がたむろして困るというクレームがあった。そこで、企業に協力いただき、地下のアトリウムのスペースを活かして、企業ブースを設けHands-onの実習を企画していただいた(写真)。

おすすめマップの作成や、理科教室の開催など、広いキャンパスを有効活用して、多様な視点から研究を見てもらえるような様々な工夫も行ってきた。
年々、中高生の参加は増加し、企業の参加も増えている。学びが大きく変わるなか、「継続は力なり」でキャンパス公開の与える影響も大きくなっているのでは。