今、社会が大きく変わりつつあります。また、ITやAIの発展により、労働環境も大きく変化しています。先行きがなかなか読めない現代社会の中で、将来を担う子どもたち、そして社会にとっても教育の果たす役割は大きいといえます。このような我が国が置かれている状況を背景に、初等中等教育課程における次期学習指導要領の改訂が検討されています。今回は小学校が2020年、そして順次、中学校と高校での導入に向けて、準備が進められています。
今回の改訂は、「社会に開かれた教育課程」を主軸に、新しい時代に必要となる資質・能力の育成として「知識の量」から、「知識の質・深み」への転換を図っている点が大きな特長です。そして、これらの資質・能力を育成していくために、「何を学ぶか」、そして「どのように学ぶか」についても、具体的に議論なされています。
新しい観点の一つとして、アクティブ・ラーニングが挙げられます。今までの、席に座って先生の授業を聞き、ノートをとる受動的な学習から、能動的なアクティブ・ラーニングを取り入れることにより、学習過程を改善し、主体性、協調力等の涵養を目指しています。また、新しい科目として「理数探究」が、探究を深める活動として検討されている。この教科は、最近着目されているSTE(A)M (Science、 Technology、 Engineering、 (Arts)、 and Mathematics)を視野に入れた教科・科目を越えた横断科目といえます。そして、教科ごと、科目ごとの見直しに留まらず、より効果的に実践していくために、幼児教育から高等教育までの全体の教育課程を通して教科ごとに見直している点は、今までにない新しい試みです。
教育の効果は、すぐには出ません。しかし、川の流れのように、ゆっくりと、しかし、ある方向に向かって流れる、その方向付けをする重要な役割を教育は担っています。特に、学習指導要領は小学校から高校の育ち盛りで多感な子ども時代に対応する初等中等教育課程の流れを決めます。10年に一度見直されることになっていることから、 2020年以降の我が国の教育の方向性を決めると言っても、過言ではないでしょう。
「社会に開かれた教育課程」を通して、社会を切り拓く人材が育ってほしいと切に願います。
2017年3月27日号